君の言葉に笑みを

初めて聴いたとき、なんなんこれは、と思った。

こちとらNEWSの声が聴きたいねん、と。

 

ただ、曲を最後まで聴いて、鳥肌が立った。

小さな女の子の声が、こう言ったから。

 

『イルカのトレーナーになりたいです』

 

それは昔の自分の夢だった。

正確に言うと、水族館で働く獣医師になって、イルカを診たかった。

ただ、今は水族館で魚と向き合っている。

獣医師になる為の大学で、6年間も犬猫や家畜の勉強をするのが嫌で、飼育職を目指すことになり。

実習や就職活動を重ねる中で、海獣類(イルカやアシカなど)も魚類も希望するようになり。

最終的には今の職場で魚類チームに配属され、すぐ死ぬ魚たちをいかに生かすか、それに全てをかけて、必死に仕事をしている。

 

水族館の飼育員は、子どもたちにとって、そして生き物が好きな人たちにとって、夢の職業だ。

それは、幼い頃の自分がそうだったように。

「憧れられている」ということは、日々肌で感じている。

お客さんからの興味津々の視線、そして質問攻め。

時折、「遊びみたいな仕事で羨ましいなあ」なんて言われることもあるけれど、

「どうしたら飼育員になれますか」と聞かれることもある。

答えは、「知らない」でしかないけれど。

水産学科のある大学に行くなり、専門学校に行くなり、手立ては色々とあるけれど、最後には「運と根性」が勝つと言われる狭き門の世界。

実際、私も専門学校を卒業して数週間のニート生活を経て就職に至った経緯がある。

その頃の自分にあったのは、子どもの頃から夢見てきた「水族館のお姉さんになりたい」という夢を叶えたいという、意地とプライドだけだった。

『誓いあった僕らの絆』は私にもあって。

“U R not alone”を歌うNEWSの4人を目の前に、「次は絶対、水族館のお姉さんになってNEWSに会ってこの歌を歌うんだ」と勝手に(心の中で)宣言した。

 

自分に謎の自信があって、簡単に飼育員になれると思ってた。

そう簡単にいかなくて、就活が不採用続きで、どうすればいいのか分からなかった。

でも、『まだまだやれる』『報われない日々はきっとない』って、きっと私も思ってた。

 

 

夢を叶えた日々は、夢の国でも宇宙の果てでも想像の世界でもない。

毎日しんどいし大変だし疲れるし怪我するし基本的に生臭いし。

給料は信じられないくらい低いし海沿いのド田舎だから現場に行くのも一苦労だし。

 

 

それでも、

この仕事をしていてよかったと思えることがたくさんある。

 

嬉しいことも、楽しいことも、たくさんある。

 

 

 

『光の影の道』を『笑顔を絶やさぬように』歩くのは、簡単なことじゃない。

就職して何年か経って、マイナス面ばっかり見えてきて、そういえば愚痴が増えた。

 

でも、憧れてくれる、小さな女の子がいる。

顔も知らない女の子。

それはきっと、この声の持ち主だけじゃない。

そんな誰かの為に、もっと笑顔でいようと思った。

素敵な「水族館のお姉さん」でいよう、って自然と背筋が伸びた。

 

 

きっと狙った感想じゃないだろうけれど。

この曲を作ってくれた皆様、そして歌ってくれたNEWSの4人。

ありがとう。

思いがけず、自分を見つめ直すことができました。

 

 

そして、あの声の女の子。

私に、初心を思い出させてくれてありがとう。

イルカのトレーナーは大変なお仕事だけど、

やりがいに溢れた、絶対にいい職業だよ。

きっと、トレーナーになれるから。

素敵なトレーナーになってね。

 

 

私は、夢の国で、明日からも生きていきます。

これが私の夢、だから。